ウサギの専門診療

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ウサギの大切な特徴

草食動物

 ウサギは、完全な草食動物です。
 ペレット中心の食事では、繊維質が足りないために胃や腸の動きが悪くなったり、炎症をおこしやすくなります。また、咀嚼する回数が不足するために不正咬合の原因にもなります。
 牧草中心で、ペレットと野菜を副食とした食生活がオススメ。干し草は1日中食べられるようにしっかりと与えましょう。そして、副食としてペレットは1日2回、決まった量をあげるようにします。水は、常に新鮮な水を飲めるようにしておきます。
 炭水化物は重度の腸炎や肥満の原因になりますので、なるべくあげない方がいいと思います。また、単糖類や二糖を多く含む食べ物も避けましょう。
 ※炭水化物の多い食べ物・・・バナナ、サツマイモ、トウモロコシ、えん麦、パン、小麦、ジャガイモ、市販のおやつ(主成分は小麦)。
 ※単糖類・二糖類の多い食べ物・・・果物、ハチミツ、砂糖、水飴。
 

暑さに弱い

 暑さに極端に弱い動物なので、夏はエアコンを常につけていられる環境が必要です。
 湿度がこもるような換気不全もよくありません。呼吸器感染や皮膚病の原因になったり、干し草の雑菌や真菌の繁殖する場合があります。
 ウサギが快適に過ごせる温度は15~23℃くらいです。
 ストレスと痛みに弱い
 ストレスにより腸炎をおこすことがあります。なるべく日常的に排除できるようなストレスは取り除いてあげましょう。
 

化膿すると治療は長期化

 ウサギが作り出す膿は、クリームチーズのように固く、腫瘍のようなしこりになります。表面上の化膿は治っても、皮膚の下の組織に菌が残っていて増殖し、膿瘍となります。パスツレラという抗生物質の効果が効きづらい細菌による増殖によっておこるため、完治が難しく、治療は長期化します。外科手術と内科治療の併用により維持します。
 

縄張り意識が強い

 ウサギは縄張り意識が強く、ウサギ同士が接触すると喧嘩することが多いです。オス同士を同居させると喧嘩がたえません。2頭以上飼育する場合には、別々のケージがおける環境かどうかをしっかりと確かめてから飼育をはじめてください。
 単独飼育であっても、強い縄張り意識のため、おしっこをまき散らしたり、マウンティング、スタッピング、飼い主に対しての攻撃性の増大などの、縄張りを誇示する行動がみられることがあります。このような場合には、去勢手術が有効です。
 

骨が薄く、骨折しやすい

 ウサギは数メートルを全力で走ることに特化した体型のため、後ろ足の筋肉が発達し、骨は薄く軽くできています。そのため、暴れるウサギを無理に保定すると、骨折したりすることがあります。ですから、ウサギの診察は、そのウサギさんの性格によって診察台、だっこした状態、床にすわったまま診察したりしますので、よろしくお願いします。
 日頃から、だっこや爪切りができるように慣らしていただくと、診察のとき、ウサギさんに必要以上にストレスをかけないですみます。
 

早期発見・早期治療が大切

 かかりつけに定期的に診てもらう健康状態のチェックはとても重要です。様々な検査結果の積み重ねは、もしも病気になった時や、なりかけた時にとても役立ちます。3歳を過ぎたら、年に2回は行うようにしましょう。

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不正咬合

 ウサギに一番多くみられる疾患は、不正咬合だと感じています。切歯(前歯)や臼歯(奥歯)の噛み合わせが悪くなる事により、食欲不振だけでなく、上部呼吸器疾患、眼科疾患、皮下膿瘍の原因となっている事も多いです。
 不正咬合で歯が長く伸び続ける事により、尖った歯が頬や舌を傷つけてしまう事もあります。また、根尖の部分の炎症により、上部呼吸器疾患(鼻水、くしゃみ)、眼科疾患(流涙、眼球突出など)、上下の顎骨の融解による皮下膿瘍を併発することも多くみられます。
 原因としては、咀嚼不足となる食事内容(低繊維食)、外傷、遺伝、齲歯などがあります。
 日頃から噛み合わせは絶えずチェックしていく事は大切で、よしむら動物病院では口腔内のチェックはできる限り毎回行うようにしています。

ウサギさんの不正咬合の臨床症状

 食欲不振
 食べたそうにしているが、食べない。
 いつもの食事を食べなくなった(ペレットだけ食べる。または乾燥牧草のみ食べる。)
 食べ方がいつもと違う
 よだれが多く、いつも濡れたようになっている。口まわりが汚れている。
 前足が汚れている。

 


消化器疾患

 ウサギに多くみられる疾患として、消化器の動きが低下する事によりおこる消化管うっ滞があげられます。この疾病は、いわゆる毛球症とも言われますが、原因は毛の塊が詰まることだけでなく、繊維質の不足や、咀嚼が少ない食事の多給、不正咬合、ストレス、脱水などによりおこります。
 また、消化管の運動機能が止まってしまうと、腸内の細菌のバランスを崩して、病原性の高い細菌が異常増殖による影響で、腸毒素血症、腎機能障害、肝リピドーシスという重篤な状態にまで進行することもあります。
 この症状は肥満傾向のウサギほど多く認められ、食欲が全くなくなってから半日ほどで症状が現れることもあります。
 基本的な治療は、内科治療になりますが、完全に消化管が閉塞している場合には外科治療が必要になります。

ウサギさんの消化管うっ滞の臨床症状

 便の異常(軟便や下痢、滴のような便、数珠のように繋がった便、大きさが不揃い)
 排便の量が少くなった。または、排便が無くなった。
 いつもの食事を食べなくなった(ペレットだけ食べる。または乾燥牧草のみ食べる。)
 食欲がなくなった。
 元気がない。痛がる仕草や姿勢をしている。呼吸数が多い。

 


子宮疾患

 4才以上になると、子宮腺癌、子宮水腫、子宮蓄膿症、子宮内膜増殖症、平滑筋肉腫などの子宮疾患の発症率が格段に高くなります。
 治療は、卵巣と子宮を摘出する外科手術となりますが、出血による貧血、子宮が大きくなることによる臓器の圧迫、悪性腫瘍の転移による影響などにより、周術期のリスクが高くなります。
 この病気の一番の予防は、早期の避妊手術だと思います。
 

ウサギさんの子宮疾患の臨床症状

 血尿がある(尿に一部血が混じる。大量出血の場合は、赤色尿)
 食欲は変わらないが、体重が減少する。
 食欲がなくなった。
 お腹が張っている

 

避妊・去勢

 

 雌のウサギさんは、4才以上になると子宮疾患を発症する可能性がとても高い動物です。また、乳腺腫瘍の発生も多く、早期の避妊手術により生殖器の病気の予防をすることが期待できます。
 また、雄のウサギさんは、生成熟を迎えると、テリトリー意識が高くなり、マーキングをしたり、攻撃性が高くなる場合もあります。また、複数のオス同士の、はげしい闘争がみられる場合もあり、早期の去勢をお勧めします。 
当院は、痛みを最小限に抑えるために、手術前の鎮痛剤投与を行っています。また、ウサギ用の気管チューブ、麻酔システム、覚醒室(麻酔を安全に覚ましていく為の部屋)等を用いて、周術期のリスクを軽減する手術を心がけています。
 

うさぎさんの男の子

去勢手術のメリットとデメリット

メリット 

○睾丸腫瘍の予防

マーキングの軽減

○発情による攻撃性の抑制

○発情による免疫力の低下の軽減

 

デメリット 

○代謝が低下する

○食欲の増加による体重の増加

○子どもが作れなくなる

 

 

ウサギさんの女の子

避妊手術のメリットとデメリット

メリット 

○将来的に予防が期待できる病気

 ・卵巣・子宮疾患の予防
 乳腺腫瘍の発生の抑制

○発情時のストレスが軽減

○発情による免疫力の低下の軽減

デメリット

○代謝が低下する

○食欲の増加による体重の増加

○子どもが産めなくなる